すべてをあなたに (Saving All My Love For You) [1985]
プロデュース:マイケル・マッサー
デビュー曲「そよ風の贈りもの (You Give Good Love)」につづくセカンドシングルであり、はじめての全米ナンバーワンソング。この曲でホイットニー・ヒューストンの名前は世界中に轟いた。ポップミュージック史を代表する不倫ソングの古典でもある。クライヴ・デイヴィスによれば、デビューアルバム『そよ風の贈りもの (Whitney Houston)』の中で「ホイットニーらしさ」を理想的に体現するのは、この曲と「オール・アット・ワンス」「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」に尽きるという。ユダヤ系の人気作曲家マイケル・マッサーの手によるその3曲は、人種や階層を問わず広く浸透するという自信があったらしい。だがまず黒人コミュニティからの強い支持を得なければならないと考え、当時R&Bシーンで最もヒップな存在だったカシーフがプロデュースした「そよ風の贈りもの」をデビュー曲に配したそうだ。クライヴの慧眼ぶりが冴える差配といえよう。とはいえ本作でも描かれたように、それでもなお「黒さ(The Blackness)が欠けている」という黒人コミュニティからの批判にホイットニーは長年悩まされるのだが。